ChatGPT「Atlas」をWeb解析ツールとして使う|UI/UXをロジカルに改善する方法
- 「Webサイトを改善したいけれど、どこをどう直せば成果が上がるのか分からない」
- 「自分のサイトを客観的に見ることができず、誰かにアドバイスをもらいたい」
GA4などのアクセス解析ツールの数字やヒートマップ画像を見て「で、どうすればいいの?」と立ち止まってしまう方も多いのではないでしょうか。
たとえば、「離脱率が高い」ということがわかったとします。でも、なぜ離脱されているのか。どの要素が足を引っ張っているのか。それは数字だけでは分かりません。自分自身でページを見ても、感覚に頼った仮説しか出てこない…。
そこで、今注目したいのが、OpenAIのChatGPTと統合されたWebブラウザ「Atlas(アトラス)」です。

ChatGPT Atlasは、OpenAIが開発した新しいAIブラウザです。一般的には、「AIと一緒にWebを探索できるブラウザ」として紹介されることが多く、調べ物をしながらChatGPTに質問を投げかけたり、記事の要約や背景知識の補完をリアルタイムで受け取ったりといった使い方が主流です。
このブラウザの持つ「Webページを読み取る能力」に注目し、Webサイトの改善に活かそうというわけです。ページの配置や要素構成を読み取った上で、数値では見えにくい「構造的なボトルネック」を炙り出す役割を担ってもらうことは可能です。
ただ、Atlasは人間のように見た目を判断するわけではなく、HTMLの構造(Webページの「骨組み」)を読むということしかできません。ですが、ちょっとした工夫で、的確なアドバイスを引き出すことも可能です。
この記事では、ChatGPT Atlasを使ってWebページ改善のヒントを得る方法を、3つのレベルに分けて解説します。
- レベル1:プロンプトだけで分析を依頼する
- レベル2:スクリーンショットを使って視覚情報を補足する
- レベル3:スクリーンショットとGA4のデータを元にさらに深掘り分析する
Atlasを単なるサイト閲覧ツールとしてではなく、「Web解析のアシスタント」として使いこなす方法を見ていきましょう。
本記事の内容は動画でも解説しています。
Atlasの基本的な使い方
Atlasをインストールし開いたら、以下のようなブラウザが立ち上がります。ブラウザとしての使用感はChromeと大差ありません。
分析したいページを開き、画面右上にある「ChatGPTに質問する」ボタンをクリックすると、右側にChatGPTと会話をできる画面が開きます。

レベル1:プロンプトだけで分析してもらう
まずは手始めに、プロンプトを入力するだけで分析してみましょう。Atlasで対象のWebページを開き、サイドバーに開くチャットウィンドウにプロンプトを入力するだけ。これだけで、ページの構造をAIが解析し、改善点についてアドバイスをくれます。
ただし、ここで重要なのは、「何を知りたいのか」を具体的に伝えることです。
単に「このページを分析してください」とだけ書いても、返ってくるのは表面的で一般的なコメントばかり。「ボタンが多すぎるかもしれませんね」とか「テキストの量が多いですね」といった「あるある指摘」で終わってしまいます。
以下のような「改善したい目的」を明確に含めることがポイントです。
- UIを改善したい
- コンバージョン動線を見直したい
- 検索順位を上げたい
こうした目的を伝えるだけで、AIの回答の焦点が定まり、分析の深さが一段階変わります。
また、ユーザーの閲覧環境(PCメインか、スマホメインか)といった前提条件を補足しておくと、より現実的なアドバイスを引き出しやすくなります。たとえば、スマホユーザー中心であれば「ボタンのタップ領域が狭いかもしれません」といった、モバイル視点の改善提案が返ってくることもあります。
実際のプロンプト例としては、以下のような書き方が有効です。
このページのユーザビリティを改善するためのアドバイスをください。
UIの使いやすさに課題があると考えています。
スマホユーザーが中心です。実際にAtlasにプロンプトを投げかけたのが以下の画像です。

まずはこうしたシンプルな質問から、ChatGPT Atlasとの対話を始めてみましょう。
これはあくまで出発点ですが、「言葉だけでどこまで伝わるか」を知るうえで、意外に得るものが多いはずです。
レベル2:スクリーンショットを共有して視覚情報を補足
記事の冒頭でも書いた通り、AtlasはWebページのHTML(内部的な構造)を読み取っているだけですので、人間が見た「ページの見た目」を理解することはできません。以下はイメージ画像ですが、基本的にはプログラムコードを読み取っていると考えてください。

レイアウトのバランスや視線の流れ、余白の取り方や装飾のトーンなどは、HTML構造だけではAIには分かりません。人間にとっては自然に感じる画面設計も、Atlasには「どこに何があるか」の位置情報しか伝わっていないのです。
この弱点を解消するために、ページのスクリーンショットを添付します。画像として共有することで、視覚的な補完情報を提供でき、AtlasがよりUIに即した提案をしてくれるようになります。
ページのスクリーンショットを撮る場合には、Chrome拡張機能などで対応します。
私は以下のChrome拡張機能を使っています。AtlasもChromeと同じChromiumをベースに作られていますので、同じ拡張機能を使うことが可能です。Atlasで以下のリンクを開くことでインストールできます。
スクリーンショットを添付した上で、以下のようなプロンプトを入力します。レベル1と同じように、「どこに課題を感じているのか」「どの部分に着目してほしいのか」といった課題をAIに提示するようにしましょう。
このページのユーザビリティを改善したいです。
添付のスクリーンショットも参考に、改善すべき箇所を指摘してください。
スマホユーザーが中心です。以下の画像が、実際にプロンプトを入力した例です。プロンプトと合わせて、スクリーンショットの画像を添付します。

より深い分析をしたい場合には、アクセス解析データなど、与えるデータをさらに増やします。
レベル3:GA4のデータと組み合わせて分析する
ここからは、より実践的でピンポイントな改善提案を引き出すステップです。
Googleアナリティクス4(GA4)などのアクセス解析ツールで「ユーザーがどこで離脱しているか」「どの要素でつまずいているか」といったデータを持っているのなら、それをAtlasに共有することで、より深い分析が可能になります。
今回は、スクロール深度と目次クリックのデータを元に分析してみましょう。Looker Studioで作った以下のようなGA4レポートを共有しました。

上記データにも表れていますが、私が分析したページでは、スクロール深度20%〜30%と30%〜40%の地点で多くのユーザーが離脱していることがわかっていました。今回は、「そのあたりに何があるか」をGA4のデータと照らし合わせてAtlasに見てもらうことにします。
今回使ったプロンプトを以下に書いておきますが、こちらを参考に、ご自身のデータに合わせて柔軟に変更して使ってみてください。
このページでは、スクロール深度20%〜30%、30%〜40%の地点で多くのユーザーが離脱しています。
添付のスクリーンショットとGA4データを参考に、改善すべき箇所を指摘してください。
- スクリーンショット内にページのスクロール深度の目盛りを記載しています。
- GA4データの目次クリックイベントはユーザーの興味関心度合いを測る材料として使ってください。
- スマホユーザー中心です。以下の画像が、実際にAtlasにプロンプトを入力した例です。プロンプトと一緒に、スクリーンショットとGA4のデータ(Looker Studioで作成したダッシュボード)を添付します。

このように「数字」と「視覚情報」を同時に提示することで、AIにとっての「問題の文脈」がよりクリアになります。
上記で使ったスクロール深度や目次クリックのデータは、デフォルトのGA4に備わっているものではありません。独自の「カスタムイベント」を設定することで、こうしたデータを取れるようになります。以下の記事を参考に設定してみてください。
ヒートマップのデータなどを共有してみると、より精度の高い分析ができるかもしれません。
まとめ
Webサイトの改善に取り組むときに、まず立ちはだかるのが、「なんとなく違和感があるけれど、それをどう解釈し言語化したらいいのか分からない」という曖昧な感覚です。
「見た目がちょっと使いにくそう」「導線がしっくりこない」「情報が詰まりすぎている気がする」といった感覚的な理由だけだと、ロジックを求めてくるクライアントや上司を納得させることはできません。
そんな「ロジカルさ」が欲しいときには、生成AIに助けてもらいましょう。ChatGPT Atlasは、HTMLの構造や配置、要素の関係性を読み取りながら、「この導線は遠回りかもしれない」「ここでユーザーが迷いやすい」といった形で、感覚的な違和感にロジックという輪郭を与えてくれます。
プロンプトや与えるデータの工夫次第で、ページの構造やデザイン、GA4のデータを総合的に使いながら、さらに説得力のある回答を作ることも可能です。
とはいえ、AIの答えをそのまま鵜呑みにする必要はありません。ChatGPT Atlasは、絶対的な審判ではなく、頼れる「相棒」や「同僚」として捉えるのが良いと思います。自分の仮説をぶつけたり、データをもとに壁打ちするうちに、「ああ、やっぱりそこがボトルネックだったのか」と腑に落ちる瞬間が訪れます。
まずは、プロンプト1つから試してみてください。
言葉にできない違和感を、AIと一緒に見つめ直すというプロセスが、あなたのWebサイト改善に新しい視点をもたらしてくれるはずです。
この記事では「ページのUI」に焦点を当てて分析しましたが、「SEOコンテンツ」としての評価をしたい場合には、以下の記事も参考にされてみてください。
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