コンバージョン率の分母の使い分け|ユーザーなのかセッションなのか
コンバージョン率(CVR)の分母に何を選べば良いのかわからない
そんな方に向けた記事です。
コンバージョン率(CVR)とは、Webサイトに訪問したユーザーのうち、特定の行動(購入や問い合わせなど)を達成した割合を示す指標です。
このコンバージョン率の分母には何を使うべきなのかを迷う方も多いはずです。
GA4の指標にも「ユーザーキーイベント率」「セッションキーイベント率」という2つの指標がありますよね。
※キーイベントというのは、GA4の中でコンバージョンの意味で使われる指標です。
この2つのキーイベント率の、それぞれの計算式は以下のようになっています。
- ユーザーキーイベント率
-
キーイベント数 ÷ アクティブユーザー数
- セッションキーイベント率
-
キーイベント数 ÷ セッション数
では、この2つはどのような考え方のもと使うべきなのか。
結論からお伝えすると、分母は「何を評価対象とするのか」によって使い分けます。例えば、ユーザー行動を評価したい場合には「ユーザー」、セッションを評価したい場合には「セッション」となります。
他にも、評価対象によっては表示回数(ページビュー数)やCTAの表示回数などを使った方が良い場面もありそうです。
これだけだと、どんなケースで何が有効なのかイメージしづらいかもしれません。場面分けして見ていきましょう。
ユーザー数を分母にする場合
まずはユーザー数を分母にする場合について見ていきましょう。ユーザー数というのは、GA4の指標でいうところの「アクティブユーザー数」のことですね。ここでは便宜上「ユーザー数」と呼びます。
GA4には、「アクティブユーザー数」の他に「総ユーザー数」という指標があります。総ユーザー数は、画面をフォーカス状態にしていなかったような、実質的にサイトを見ていないユーザーも含まれます。
一方のアクティブユーザー数は、ページをフォーカス状態にしていたユーザーのみを記録します。アクティブユーザー数の方が、Webサイトの利用実体に近い数値が得られるはずです。
ただ、この辺りを厳密に管理しようとは思わないことも大切です。GA4から得られる数値は、あくまでも「傾向値」と割り切って使うことをおすすめします。
「ユーザー数」を分母にするのは、個々のユーザーの行動を評価する際に有効です。以下にユーザー評価を行うシチュエーション例を挙げます。
会員サイトなど継続利用が前提のサービスを評価する
1人のユーザーがどれだけの価値をもたらしているかを評価するため、ユーザー単位での測定が必要です。特に継続的な利用が前提の会員制のサイトでは、個々のユーザーの行動が重要になります。
オーディエンスを活用した広告配信を評価する
施策を単体で評価する場合には基本的にはセッションを使いますが、オーディエンスを活用する場合は例外です。
オーディエンスというのは、特定の行動を起こしたユーザーのグループです。特定のユーザー群に焦点を当てるため、ユーザー数による評価をした方が施策の結果を正確に捉えられるはずです。
セッション数を分母にする場合
「セッション数」を分母にするのは、1回の訪問あたりのコンバージョンを重視したい場合に適しています。例えば、広告キャンペーンやランディングページの評価では、セッションを使うのが適切な場面が多いはずです。
セッション数を分母にするシチュエーションについても見ておきましょう。
リスティング広告の効果を測定する
リスティング広告は「今すぐ客」を刈り取るために使うのが一般的ですので、セッション単位での評価が有効です。
ただし、オーディエンスリストに基づいた、いわゆる「リマーケティング」を行う場合には、例外的にユーザー数を分母とするのが望ましいでしょう。
ランディングページのパフォーマンスを評価する
訪問者がランディングページに来たときには、そのセッション内でコンバージョンするかどうかが焦点になるため、セッション単位の測定が適しています。
表示回数(ページビュー)を分母にする場合
表示回数(ページビュー数)を分母にすると、特定のページやコンテンツのパフォーマンスを詳細に評価できます。コンテンツマーケティングやブログ記事の効果を評価する際には、この指標が便利です。
ただし、ここでのコンバージョンは、例えばCTAのクリック数や読了など、ページ内で発生するものに限ります。メディアサイトで流入を取り、問い合わせ完了までを計測する場合には、ユーザー数またはセッション数を分母とするのが良いでしょう。
表示回数を分母にすると望ましいのは、以下のようなケースです。
ブログやメディアサイトの記事ごとの反応率を知りたい
アフィリエイトブログやオウンドメディアの記事ごとのパフォーマンスを知りたい場合には、ページビューを基にCTAのクリック率を算出し、コンバージョン率として使用するのがおすすめです。記事とCTAや広告の訴求がマッチしているかどうかを測る指標になるからです。
ただし、オウンドメディアのように記事とコンバージョンポイントが離れている場合には、セッションやユーザーごとに算出したコンバージョン率も見て、サイト全体の評価も同時に行う必要があります。
CTAや広告のクリック数はGA4の標準的な指標ではないため、Googleタグマネージャーによる設定が必要です。設定方法については以下の記事を参考にしてください。
CTAの表示回数を分母にする場合
CTA(Call to Action)の表示回数も、場合によってはCVRの分母になり得るため、ここで紹介しておきます。
この指標もページビュー数と同じく、サイト全体というよりは施策単位の評価に使います。アフィリエイトサイトのように、CTAのクリック自体がコンバージョンとなる場合に有効です。
バナーやボタンが表示された(ユーザーが目にした)内の何%がクリックしたのかというパーセンテージを比較し、訴求を最適化するという使い方をするのが良いでしょう。
もちろん、表示されたCTAをユーザーが認識したかどうかまでを計測できるわけではありません。クリック率の低さが、必ずしも表示の頻度や内容に原因があるとは限らない点に注意が必要です。
クリック率が低い場合には、そもそもページ内のCTAの配置がユーザーの目に触れやすいかどうかも考慮する必要があります。定性的な視点とデータを組み合わせて、立体的に観察するのが良いでしょう。
CTAの表示回数を分母にす分析方法は、以下のような場面で役立つはずです。
複数のCTAのクリック率を比較したい場合
CTAの表示回数を分母にすることで、クリック率の高いものと低いものを明確に比較でき、効果的な訴求や設置位置などを特定できます。
CTAのクリック率を算出するときの分母は、CTAの表示回数以外にも、ユーザーやセッションを使う場合があります。この時の考え方については、前述のユーザー数やセッション数のセクションの考え方と同じになります。その場合の評価対象は、オーディエンスやランディングページなどになります。ここでもやはり、「何を評価したいのか」によって分母とする指標を考えるのが良いでしょう。
CTAの表示回数やクリック数は、GA4の標準イベントではないため、Googleタグマネージャーを使った設定が必要です。以下の記事を参考に設定してみてください。
まとめ
コンバージョン率(CVR)を算出する場合には、ビジネス形態や評価対象に応じた分母の使い分けが不可欠です。
基本的には「評価対象を分母にする」と覚えておきましょう。
まとめると以下の通りです。
- ユーザー数を分母にする場合
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- 会員制サイトなど継続利用が前提のサービス
- 広告のオーディエンス配信(リマーケティング)
- セッションを分母にする場合
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- リスティング広告の効果
- ランディングページのパフォーマンス
- ページビューを分母にする場合
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- メディアサイトの記事ごとのパフォーマンス
- CTAの表示回数を分母にする場合
-
- 複数のCTAの効果を比較
同じサイトでも、評価対象によっては異なる分母で計算する必要があるかもしれません。
分析の目的を本質的に考え、どんな指標を使うべきか(または作るべきか)を考えながら分析しましょう。
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