【Webサイトの健康指標】GA4のエンゲージメント率の活用と限界
この記事では、GA4のエンゲージメント率の定義、レポートでの見方、活用方法について解説します。
GA4のエンゲージメント率は、ユーザーがどれだけ積極的にWebサイトを利用しているかを測る指標です。「エンゲージメント」という言葉は、日本語では「約束」「契約」などと訳されますが、GA4を使う文脈の上では「Webサイトに深く関わること」などと理解すればよさそうです。
エンゲージメント率は、前のバージョンのユニバーサルアナリティクス(UA)で使っていた「直帰率」に代わる指標として、最新バージョンであるGA4から登場しました。
「積極的にWebサイトを利用している」ということを判定するために定義づけられている基準は以下の3点です。
- 10 秒を超えてサイトに滞在した
- 2回以上のページビューが発生した
- コンバージョンイベント(キーイベント)が発生した
Webサイトに一定時間留まり、「ユーザーにとって何か価値のある行動を取ったか」ということを推測できる内容になっています。
ユーザーがWebサイトに訪問したときに、上記のいずれかの条件に当てはまると「積極的にWebサイトを利用している」と判定されます。これを、「エンゲージのあったセッション」といいます。
セッションというのは、Webサイトへの訪問のことを指します。
すべてのセッション(訪問)に対する「エンゲージのあったセッション」の割合が、エンゲージメント率ということですね。
エンゲージメント率は直帰率とは逆に、高いほど良いという指標です。エンゲージメント率が高ければ、ユーザーに価値を与えている良いサイト(またはページ)であると判断できます。
ユニバーサルアナリティクスで重要指標として使っていた「直帰率」は、GA4にも存在します。ただし、GA4の直帰率はエンゲージメント率の逆数(1 – エンゲージメント率:エンゲージメントのなかったセッション)であり、以前の「1ページしか見なかったセッション」とは定義が全く異なります。
それでは、エンゲージメント率の重要性について、さらに詳しく見ていきましょう。
なぜ、エンゲージメント率が重要指標なのか
エンゲージメント率は、Webサイトの健康状態を測る上で非常に重要な指標です。
近年、Googleの検索エンジンは、Webサイト内の行動データも順位決定のための判定基準の1つにしていると言われています。つまり、「Webページの中に何が書かれているか」に加えて、「Webページをどのように使っているか」も検索順位に影響する可能性があるということです。
エンゲージメント率が高いほど「滞在した」「他のページに移動した」など、サイトを有意義に使ったと判断できますので、パフォーマンス改善の1つの目安として使えます。
Webサイトのパフォーマンスをより詳しく解析するためには、この記事の後半で出てくる「カスタムイベント」を設定する必要があります。GA4を初期状態で使っている場合には、まずはこのエンゲージメント率をページ改善の指標として使っていくのが良いでしょう。
エンゲージメント率の目安:最低限60%は欲しい
では、エンゲージメント率がどれくらいあれば、「良いサイトである」と判断できるのか疑問に思われるかもしれません。
結論、「エンゲージメント率がどれくらいあれば良い」という基準はありません。Webサイトは1つ1つ目的も違えば構造やコンテンツなど1つとして同じものはないからです。
とはいえ、何か目安になるものが必要ですよね。私の体感値では、エンゲージメント率は最低でも60%程度は欲しいです。
これまでさまざまな記事を見てきた限り、メインキーワードで検索上位を取れている記事(つまりGoogleから「品質が高い」と見なされているコンテンツ)は、どれもエンゲージメント率が60%を下回ることはありません。訪問の6割がユーザーにとって有意義なものであったということですね。
しっかり作り込まれたコンテンツであれば、エンゲージメント率の基準の1つである「10秒以上滞在」は比較的簡単にクリアできることは想像できると思います。
逆に言えば、6割のユーザーを10秒も惹きつけられないコンテンツは、質が高いはずがないということです。
もちろん、これはコンテンツの種類にもよるので一概に言えることではありません。
また、60%という具体的な数値を出しましたが、この絶対値との比較というよりは、サイト内の他の記事に比べてどうなのかという相対比較をする方が良いと考えています。対象の記事のエンゲージメント率が、サイト内の他の記事と比べて高いか低いかという比較をするのが有意義です。
GA4でエンゲージメント率を見る方法
実際のGA4の画面でエンゲージメント率を見ていきましょう。
エンゲージメント率はデフォルト状態で備わっている指標なので、あなたのGA4でも同じやり方で見ることができます。
エンゲージメント率は、GA4の「レポート」「探索」のどちらでも見られますので、それぞれ方法を解説しますレポートや探索の使い分け方法については以下の記事で解説していますので、基本的な理解が不安な方は合わせてご覧ください。
レポートでエンゲージメント率を見る方法
まずはレポートでエンゲージメント率を見てみましょう。
以下の画像では、ユーザー獲得レポートを表示しています。ユーザー獲得レポートの場合、初期状態でもエンゲージメント率が表示されています。
他のほとんどのレポートでは、標準でエンゲージメント率が表示されていないためカスタマイズが必要です。
レポートのカスタマイズの手順は以下の通りです。例としてページ別のエンゲージメント率を出す場合について紹介します。
レポートページの右上にあるペンマークがカスタマイズボタンです。これをクリックすると、カスタマイズモードになります。
「レポートをカスタマイズ」メニュー内の「指標」をクリックします。
指標の最下部にある検索的に「エンゲージメント」と入力し、エンゲージメント率を探して選択します。さらに適用ボタンを押すと、レポートの表に反映されます。
保存ボタンを押すと、エンゲージメント率が追加されたレポートを保存することができます。「現在のレポートへの変更を保存する」を選ぶと、これまで使ってきたレポートにエンゲージメント率が追加されます。
最後に、ページ左上の「戻る」ボタンを押すと、元のレポートに戻れます。
探索でエンゲージメント率を見る方法
探索は、ディメンションや指標を自由に組み合わせて使えるレポートです。エンゲージメント率を、さまざまな切り口で見ることが可能です。
探索でエンゲージメント率を設定する方法は以下の通りです。ページ別のエンゲージメント率を算出する方法を元に解説します。
空白のレポートを開き、ディメンションの追加ボタンから「ページパスとスクリーンクラス」を選択し、インポートボタンを押します。
指標の追加ボタンから「エンゲージメント率」を選択し、インポートボタンを押します。
追加した「ページパスとスクリーンクラス」を行に、エンゲージメント率を値に設定すると、以下のような表が作成できます。
上の図では、参考指標として「セッション」も設定しています。
探索の基本的な使い方は、以下の動画で解説しています。
ページ別以外にも、ディメンションの設定次第で、さまざまな切り口でデータを見ることができます。以下はその一部の例です。
流入元
どの流入元から流入したセッションがエンゲージしやすいのかを調べたい場合には、ディメンションに「セッションの参照元 / メディア」を設定します。
デバイス別
デバイス別でエンゲージメント率を見たい場合には、ディメンションに「デバイスカテゴリ」を設定します。
どうやってエンゲージメント率を高めるか
エンゲージメント率を高める方法を一言で言ってしまうと、「ユーザーの課題を解決する記事を書く」ということです。
Webサイトに訪れるユーザーは、何らかの課題を抱えています。例えばこの記事を読んでいるあなたも、「エンゲージメント率の基準が知りたい」「エンゲージメント率を高める方法が知りたい」という課題を抱えているはずです。
この課題をいかに解決するか、ということをWebサイトの運営者側(このサイトであれば私)は考えなければなりません。
ただ、課題解決をする記事を書くというのは抽象的で属人性が高く、誰にでも一朝一夕にできるようなものではありません。
ですので、どんなサイトでもすぐに実践できる再現性の高いテクニックを2つお伝えします。
コンテンツ制作の方法については私もまだ言語化できていないため、それが揃うまでは、「Googleが掲げる10の事実」をバイブルとしてご利用ください。
Googleがどのような理念を持って検索エンジンを運営しているのかがわかるので、「良いコンテンツとは何か」を考える上で大きなヒントになります。
記事内に動画を掲載する
記事の内容を動画でも解説し、それを記事内に貼るというのは、エンゲージメント率を高める上で非常に有効です。
特に、何かの手順を説明するようなコンテンツの場合、記事よりも動画で見たいというニーズは多いはずです。この記事の一部のセクションにも掲載していますが、当サイトの手順を解説するタイプの記事では、関連動画を掲載しています。
動画を掲載した記事のパフォーマンスを、実際のGA4のデータで見てみましょう。以下の画像は、「動画を再生したセッション」と「動画を再生していないセッション」を探索のセグメント機能で比較したものです。
セッションの実数は少ないですが、「動画を再生したセッション」のエンゲージメント率が非常に高く、100%近くに達することがわかります。動画を再生しているわけですから、「10秒以上滞在」という条件は簡単にクリアできるということです。
さらに、平均セッション継続時間(訪問時の滞在時間)は、「動画を再生しなかったセッション」の4倍にも及びます。
もちろん、どんな記事にも動画が有効というわけではありません。検索順位が伸び悩み、他に打てる手がない時、「動画で説明した方がわかりやすいのでは?」という視点も持っておくと打開策になりうるということです。
あくまでもユーザーのことを第一に考え、必要なら動画で解説することも検討しましょう。
記事内に動画を埋め込むことはSEO対策にも効果的です。
私のクライアントのオウンドメディアで、ある記事は検索結果の1ページ目には表示されていましたが、「あと一歩」というところで1位に届きませんでした。そこで、記事の内容を解説する動画を作成し掲載したところ、1週間と経たないうちに検索順位が1位となったのです。
クリックできる目次であることを伝える
意外に思われるかもしれませんが、目次をクリックしやすくすることもエンゲージメント率に影響します。
このサイトでも取り入れているテクニックなのですが、記事冒頭の目次タイトルを「読みたい場所にジャンプ」に変更しています。
これだけで、「この目次はクリックできます」ということをユーザーに伝えることができます。
他のサイトの事例になりますが、目次のタイトル表記を変えたことで目次のクリック率が上がり、同時にエンゲージメント率も上がりました。以下はその時のデータです。
上記画像の左側は、目次タイトルを「目次」から「読みたい場所にジャンプ」に変更する前後の目次クリック率を比較したデータです。タイトル変更後に大幅にクリックされやすくなったことがわかります。
さらに上記の右側の画像は、同じ期間のエンゲージメント率の変化です。微増ではありますが、目次のクリック率がエンゲージメント率にも影響を与えそうだということが伺えます。
目次をクリックするということは、ユーザーが興味のある内容をすぐに読めるということですので、サイトに留まってくれる確率が上がります。つまり、「10秒以上滞在」という条件をクリアしやすくなるということですね。
すぐにできる施策なので、目次タイトルの表記を単なる「目次」としている場合にはすぐに変更しておきましょう。
もちろん、目次を開いておくということや、クリックしてもらいやすい目次構成にするということも大切です。「クリックしてもらうためにどうすれば良いか」という観点で見直しておきましょう。
上で解説した目次のクリック数を調べる方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
エンゲージメント率の限界とカスタムイベントの重要性
前の方でも軽く触れましたが、エンゲージメント率にも限界があります。
エンゲージメント率は「滞在時間」「閲覧ページ数」「キーイベント(コンバージョン)」という3つの要素が関わるため、ユーザーの具体的な行動や意図までは捉えられません。
特にコンバージョンとして記録しているイベントは、サイトによりさまざまなため、設定内容によりエンゲージメント率が大きくぶれる可能性があります。
エンゲージメント率はあくまでもコンテンツ品質を測る上での参考指標とし、サイト上で行ってほしい重要な行動はカスタムイベントとして個別に設定するのが理想です。
カスタムイベントというのは、特定のボタンクリックや特定の地点までのスクロールなど、個別に設定するイベントです。前のセクションで紹介した「目次クリック」もカスタムイベントとして設定します。
以下は、私がGA4を導入する際に必ず設定しているカスタムイベントの一例です。
イベント | 内容 |
---|---|
CTAクリック | バナーやボタンなどのCTA(Call To Action:ユーザーからの反応をもらう箇所)がクリックされた回数を取得。 |
CTA表示 | CTAが表示された回数を取得。 |
内部リンククリック | サイト内リンクがクリックされた回数を取得。 |
目次クリック | 目次がクリックされた回数を取得。 |
スクロール | 10%地点ごとにスクロールされた回数を取得。 |
フォーム到達 | 問い合わせフォームやオプトインページが表示された回数を取得。 |
フォーム送信完了 | 問い合わせフォームの送信(サンクスページの表示)を取得。 |
サイトの目的に応じて、どれをKPIとして使うかは変わりますが、上記のイベントは必ず設定するようにしています。
Googleアナリティクスは、こうしたカスタマイズを加えなければ、本当に見たいデータは計測できません。どれだけレポートや探索の使い方に習熟しても、存在しないデータを分析することはできませんので、サイトに必要なイベントは必ず設定するようにしましょう。
カスタムイベントを設定するには、まずはイベントの概念から理解しなければなりません。以下の記事で解説していますので、参考にされてください。
また、上記で紹介したイベントの多くは、Googleタグマネージャーを使わなければ取得できません。GA4とGoogleタグマネージャーで設定できる基本的なイベントについては以下の記事で解説しています。
まとめ
エンゲージメント率の重要性や限界について解説してきました。
ページ内のユーザー行動を評価するエンゲージメント率は、Webサイトの健康状態を確認するための重要な指標と言えます。
ご自身の管理するWebサイトの記事別のエンゲージメント率を把握するだけでも、どんな記事がユーザーに好まれるのかがぼんやりと見えてきます。まずは、この記事で解説したように、レポートや探索を使って確認してみましょう。
繰り返しになりますが、エンゲージメント率だけでは、詳しいパフォーマンスは分かりません。より解像度の高い分析をするために、サイトの目的に応じてカスタムイベントを設定するようにしましょう。
どのようにイベント設定をすれば良いかわからないという方に向けて、GA4&GTMの導入方法から基本的なイベント設定を網羅したオンライン講座も用意しています。サンプル動画もありますので、以下のページからご覧ください。
GTM&GA4を学べるオンライン講座
GoogleタグマネージャーでGA4のカスタムイベントを設定する方法や、アクセス解析の基本が学べる講座を用意しています。