GA4でCV貢献度を可視化|BigQueryなしでできるページ別分析手法
このページって、ちゃんと成果につながってるんだろうか?
Webサイトを運営していると、ふとそんな疑問が湧いてくることはないでしょうか。アクセス数はそこそこある。でも、それが「売上」や「お問い合わせ」など、実際の成果に結びついているのかは分からない…。
特に、オウンドメディアを運営されている方には「あるある」の悩みなのではないでしょうか? 私も会社員時代にオウンドメディアを運営していた際、「結局、どれくらい成果に貢献しているの?」と上司に何度となく聞かれていました。
実は、GA4にはコンバージョンしたユーザーと、そうでないユーザーを比較できる機能があります。この機能を使えば、どのページが成果に貢献しているかを、ざっくりと判断することが可能です。
「でも、なんか難しそうだし、BigQueryとか使わないといけないんじゃないの?」と思った方、ご安心ください。上記程度の分析であれば、GA4の標準機能で実現できます。セグメントを分けて探索レポートを出し、スプレッドシートで差分を出す。それだけです。
実際の例を見てみましょう。以下の画像は、私が運営しているサイトのCVユーザーと非CVユーザーの見ていたページの比較です。

上記画像の8-10行目のページは、CVしたユーザーが非CVユーザーよりも好んで見ているということになります。つまり、ユーザーをCVに導くために貢献した可能性があるページだということです(このデータの作り方については後述します)。
もちろん、どんな影響があったのかを推し量るためには、より詳細なデータ分析が必要になります。でも、コンテンツ改善のヒントを得ることが目的なら、これで十分です。
あなたのサイトでも、思わぬページが「コンバージョンに貢献していた」ということが見えてくるかもしれません。
この記事では、GA4を使って成果に貢献しているページを特定する方法と、そのデータをどう活かせばいいかを、具体例とともに紹介します。
なお、CV貢献度の高いページを発見するには、適切にGA4のイベントを設定しておく必要があります。「そもそもイベントって何?」という方は、以下の記事から読むことをおすすめします。
「コンバージョン貢献度の高いページ」とは
最初に、「コンバージョン貢献度の高いページ」とは何かという前提条件を合わせておきましょう。
「成果が出ているページ」と聞くと、コンバージョンが発生したページを思い浮かべがちですが、それだけでは不十分です。以下のデータが表すように、私が運営しているサイトの場合、コンバージョンに至ったユーザーは、そうでないユーザーに比べて2倍以上のページを閲覧しています(CV導線ページを除く)。

つまり、ランディングページとコンバージョンが発生したページ以外にも、ユーザーとのエンゲージメントを高めCVをアシストしたページがあるはずなのです。

ただGA4では、旧UA(ユニバーサルアナリティクス)のような「アシストコンバージョン」の機能がなくなり、間接的なページの貢献度を数値化するのが難しくなってしまいました。
そこで、探索の「セグメント」機能を使って、CVしたユーザーが見ていたページ群とCVしなかったユーザーが見ていたページ群を比較する、という考え方が必要になるというわけです。
セグメントとは、ある特定の行動をとったユーザーやセッションをグループ化できる機能です。旧UAでも同様の機能がありましたが、GA4では探索でのみ使えます。
では、具体的にどうやってこの分析を進めていくのか? 次のセクションで手順を詳しく見ていきましょう。
探索レポートとスプレッドシートでCV貢献度を可視化する
GA4のセグメント機能を活用すれば、「CVしたユーザー」と「CVしなかったユーザー」で、どのページがどれだけ見られているかを比較できます。ただし、GA4の画面上だけでは柔軟に指標同士を計算することはできないので、スプレッドシートを活用して差分を見つけていきます。
ステップ1:セグメントで「CVあり/なし」を分ける
まずはGA4の「探索」レポートで、2つのセグメントを作成します。
- セグメント1:CVイベントを発生させたユーザー
- セグメント2:CVイベントを発生させていないユーザー
コンバージョンイベントが正しく設定されていない場合はこの比較ができないため、事前にイベント設定がされていることが前提になります。
コンバージョン(キーイベント)については、以下のページを参考にされてください。
セグメントの設定手順は以下の通りです。
GA4の探索メニューから「空白」を選択し、新しいレポートを作ります。
画面左側の「セグメント」の右にある「+」ボタンを押してセグメント追加画面を開きます。

セグメント追加画面右上の「新しいセグメントを作成」ボタンを押します。

さらに「ユーザーセグメント」を選択します。

セグメントの条件を設定します。今回は「CVイベントを発生させたユーザー」に絞り込みたいので、「generate_lead」を選択しています。

イベントにパラメータを設定している場合には、該当のパラメータを選択します。私の場合には、フォームごとにパラメータで区別しているため、ここでは絞り込みをかけています。フォームが1種類のみの場合には、パラメータの設定は必要ありません。
イベントとパラメータの関係については、以下の記事で詳しく解説しています。
CVしなかったユーザーのセグメントも作る
上記は「CVしたユーザー」のセグメント作成方法でしたが、もう1つ「CVしなかったユーザー」のセグメントも作成します。
以下のように、「除外するグループ」として、「CVしたユーザー」のセグメントと同様の条件を入力することで「CVしたユーザーを除外する」というセグメントを作れます。

ステップ2:ページ別のPVを出してCSVエクスポート
セグメントを作成したら、「ページパスとスクリーンクラス」のディメンション別で集計表を作り、Googleスプレッドシートにエクスポートします。
作成した2つのセグメント、ディメンションには「ページパスとスクリーンクラス」、指標に「表示回数」を設定すると、以下のような表ができます。

作成した集計表の右上のダウンロードアイコンをクリックし、「Googleスプレッドシート」を選択します。

ステップ3:「CVあり/なし」のPV差分を可視化
最後に行うのが、ランキングの差分や、PV数の比率から「貢献度」を算出する作業です。
PVそのものを比較しても、非CVユーザーの方が数値が圧倒的に多いので参考になりません。そこで、ランキングというフェアな基準に揃えた上で比較をする必要があります。
エクスポートした表を、以下のように加工し、関数と計算式を入力します。

スプレッドシート内で使用している関数は以下のとおりです。ExcelやNumbersでも同様のことが可能です。
①「非CVユーザー」が見たページのPVランキング
CVしなかったユーザーが見たページをPVの多い順に「1,2,3…」とランキングしています。少しわかりにくいかもしれませんが、一番閲覧数が多い記事が1です。
ここで使用しているRANK関数は、指定した数値が、ある範囲内でどれくらいの順位にあるかを求める関数です。
=RANK(B8,$B$8:$B$51)
②「CVユーザー」が見たページのPVランキング
①と同様に、CVユーザーが見たページをPVの多い順に「1,2,3…」とランキングしています。
=RANK(C8,$C$8:$C$51)
③「非CVユーザー」と「CVユーザー」のPVランキングの差分
①CVしなかったユーザーのランキング(D列)を、②CVユーザーのランキング(E列)で割り算して差分を出します。
=D8/E8
上記の計算式を入れ、ランキングの差分を「降順」で並び替えると、この記事の冒頭でお見せした画像と同じものができるはずです。

これで、「非CVユーザー」にはあまり見られていないのに、「CVユーザー」にはよく見られているページを明確に区別できます。F列の数値が大きいほど、「CVユーザーがよく見ていた(≒CVに貢献した可能性が高い)ページ」という見方ができるということです。
ただし、ここで重要なのは、あくまで「傾向値」だということ。このデータをもとに、「なぜCVユーザーが多く見ていたのか?」を考察することが大切です。
考察を「コンテンツ制作」や「商品の改善」へ活かす
前のステップで、「コンバージョンに貢献したページ」を特定することができました。この時点で満足してしまう方も多いのですが、本当に大事なのは、そのデータをどう活かすかです。
ページごとの貢献度は、単なる数値の比較に過ぎません。重要なのは、「なぜそのページが見られたのか?」「ユーザーはそこでどんな情報を得たのか?」という解釈と、それをもとにした具体的なアクションです。
たとえば私のサイトの場合、CVユーザーは非CVユーザーよりも「ブログTOPを多く見ている」「基礎的な内容よりも応用的な要素が含まれる記事が読まれる」という傾向が見られました。
これは、ある程度の基礎知識を持ったユーザーが、より深い情報を求めてサイト内を回遊していることを意味しているのではないかと考えています。
つまり、「GA4って何?」といった初歩的な説明ではなく、「GA4のカスタム指標ってどう活用したらいいの?」といった応用的なテーマに関心が持たれていそうだということです。そうしたユーザーが、「この人ならさらに役立つ情報を教えてくれるかもしれない」と感じて、メルマガに登録しているのではないでしょうか。
この仮説に基づいて行動に移すとすれば、以下のような改善案が考えられます。
- ブログTOPに「おすすめ記事」としてCV貢献度の高い記事を紹介し、滞在時間と回遊率を高める
- 初級記事から応用記事への導線を明確にし、ステップアップを促す
- メルマガの紹介文にも「応用的な内容を深掘りしてお届けしています」と一文添える
こうした改善を重ねることで、単にページを増やすだけでなく、ユーザーの期待値に沿った導線設計や情報提供が可能になります。
「どのページが見られたか」の先にある「なぜ見られたのか」という視点が、改善施策の質を大きく変えるわけです。
分析の目的は、あくまで行動するため。数字を見て「ふーん」で終わらせてしまえば、せっかくのデータも宝の持ち腐れになってしまいます。
だからこそ、完璧な分析よりも、素早く改善に着手する姿勢が問われるのです。
細かすぎる分析は必要?企業規模による判断基準
GA4を使ってページの貢献度を見える化できるとはいえ、「もっと正確に測れないの?」と感じる方もいるかもしれません。たしかに、BigQueryと連携して生データのレベルで分析すれば、より正確で網羅的なデータを得ることができるでしょう。
ただし、それにはSQLスキルによるデータ成形の知識が不可欠ですし、社内にエンジニアリング人材がいない場合は現実的ではありません。結論から言えば、そこまでやるかどうかは企業規模や目的次第です。
リソースがあるなら、BigQueryに取り組むのも◎
大企業やメディア運営会社のように、データを事業判断の基盤にしている組織であれば、BigQueryを活用した分析は投資に見合うだけの価値があります。
たとえば、「どのページのどの要素がCVに効いているのか?」「CVに至った動線をユーザーごとに知りたい」といったレベルの詳細分析が必要であれば、GA4のUIだけでは限界があります。そんなときは、Googleの認定パートナーとなっている広告代理店などの支援を受けることで、より本格的なデータ活用が可能になります。
以下のGoogleパートナー検索から、自社の条件に合った会社を探すことができます。
スモールビジネスは「傾向」だけで十分な理由
一方で、フリーランスや小規模チームでサイトを運営している場合、「CVに貢献したっぽいページがどれか分かるだけで十分」です。むしろ、その傾向を早く見つけて、次のアクションにつなげるスピード感の方が重要です。
実際、データをどれだけ正確に取得できたとしても、それを活かして動かなければ何も変わりません。
上記で紹介した方法で傾向値を把握できたら、「CV貢献ページへの動線を増やす」「CV貢献ページへのブリッジになりそうなページを作成する」など、次の行動に移るべきです。
まとめ:データは活かしてこそ価値がある
ここまで、GA4で「コンバージョンに貢献しているページ」を特定する方法について解説してきました。
CVユーザーと非CVユーザーをセグメントで分け、各ページの閲覧数を比較するだけでも、有意義な分析結果が得られることがお分かりいただけたはずです。
もちろん、BigQueryのような高度な分析を行えば、より正確で深いインサイトが得られます。しかし、それには人的・時間的リソースやコストもかかります。多くの中小企業やフリーランスにとっては、傾向値をもとに「まず動く」ことの方が、はるかに重要です。
GA4のデータは、活用して初めて価値が生まれます。
ページの貢献度が見えたら、それをヒントにコンテンツ改善や商品の見直しに取り組んでみてください。数字が導いてくれるのは、「答え」ではなく「気づき」です。その気づきを、ぜひ次の施策につなげていきましょう。
GA4のデータを活用した分析方法については、Udemyの講座にもまとめています。以下のページから詳細をご覧ください。
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