NotebookLMでGA4レポートの分析&考察を自動化する方法【プロンプトあり】
- 「この数字、どう読み解けばいいんだろう……」
- 「上司に説明するコメントが思いつかない」
- 「自分の解釈でいいのか、不安になる」
GA4やLooker Studioを使ってレポートを作成している人なら、一度はこんな悩みを感じたことがあるのではないでしょうか。数字を集計できても、上司やクライアントからの「だから何?」に答えるのは、簡単ではありません。
「PVが増えた」「コンバージョン率が下がった」といった変化を前にして、私たちはその理由を考え、次に何をすべきかを判断しなければなりません。レポートの本質は「数字を出すこと」ではなく、「数字から何を読み取るか」にあるのです。
ですが、この「読み解き」の作業は、前述の通り簡単ではありません。属人的でバイアスも入りやすいため、自分が注力した施策には甘くなったり、結果ありきで文章をまとめてしまったり……。気づけば、レポートが「報告のための都合のいい説明」になってしまう。
そんな時に強い味方になってくれるのが、生成AIです。データにフラットに向き合い、バイアスを排除した考察をしてくれます。
今回紹介する方法でAIに出してもらったコメント例です。原文ママのため、余計な記号も入っていますが、「まあ、誰が見てもそう考えるよね」という汎用的なコメントを出してくれています。
【総括】
サイト全体のトラフィックと主要CVであるキーイベントが大幅に減少しており、KPI達成は困難な状況にある。コンテンツの質自体は高く維持されているが、流入チャネルの効率性に課題があり、トラフィックをCVへ結びつける導線設計の改善が急務である。
■ ポジティブ要素
- コンテンツの精読率や平均セッション継続時間の向上から、提供しているコンテンツ自体の質は高く、ユーザーの深い学習ニーズに応えられていると評価できる。
- Organic VideoやEmailチャネルからのユーザーはフォーム到達率が極めて高く、高意欲層のユーザーセグメント化が可能であるため、これらのチャネル投資を優先すべきである。
- 特定の記事(例:
/ga4-session-strange/)では精読率が目標の3倍近くに達しており、これらの成功要因(トピック選定、構成)を他の記事に横展開することでサイト全体のエンゲージメント向上に繋げられる。
■ ネガティブ要素
- トラフィック(アクティブユーザー数$-15.5%$)とキーイベント数($-33.3%$)の同時大幅減少は、短期的な目標達成を危うくしており、早急な対策が必要である。
- ユーザーCVRが$0.60%$と目標値の$1%$を下回っており、特にトラフィックの主軸であるOrganic Searchのフォーム到達率($1.60%$)の低さが全体足を引っ張っている。
- コンテンツのエンゲージメントが高いにも関わらず、記事全体のCTAクリック率が$0.93%$と極めて低く、記事の導線やCTAの配置、訴求内容がメルマガ登録という目標(CV)と乖離している可能性が高い。
「AIでGA4を分析する」と聞くと、MCPサーバーのような専門的な仕組みを思い浮かべる方もいるかもしれません。ですが、もっと手軽に、そして柔軟に使える方法があります。それが、この記事のメインテーマとして扱う「NotebookLM(ノートブック・エルエム)」です。
NotebookLMは、Googleが提供する生成AIツールです(大部分の機能を無料で使えます)。ドキュメントやPDFファイルをアップロードすると、その中身を正確に読み取ったうえで、プロンプトに応じたアウトプットを出してくれます。生成の元データとしてアップロードしたデータしか使わないため、GeminiやChatGPTとは違い、ハルシネーション(AIが嘘をつく現象)が少ないのが特徴(※)です。レポートをNotebookLMに読ませてしまえば、データからの考察やコメント出しをAIに代行してもらうこともできます。
NotebookLM は、アップロードされたソースに含まれる情報に基づいて質問に回答するよう設計されています。
NotebookLMヘルプ
もちろん、AIにすべてを任せるわけにはいきません。出してもらうのは叩き台であり、最終的な判断や意味づけは、人間が担うべきものです。ただ、この「補助輪」的な叩き台があるだけで、レポート業務は驚くほどスムーズになります。
この記事では、NotebookLMを活用して定期レポートのコメント作成を「ほぼ自動化」する方法を紹介します。数字の前で手が止まっているなら、ぜひ試してみてください。
この記事の内容は動画でも解説しています。
NotebookLMでコメント作成を自動化する手順
では、早速コメントを自動化する手順を紹介します。今回はあらかじめLooker Studioで作成したレポートをもとに作成します。Looker Studioでレポートを作る手順は以下の記事を参考にされてください。
レポートをPDF形式でエクスポートする

NotebookLMにレポートをアップロードする
エクスポートしたレポートのPDFファイルをNotebookLMにアップロードします。
NotebookLMトップページ右上の「新しいノートブック」ボタンを押します。

以下の画像のようなポップアップが出たら、「ソースをアップロード」の枠の中にPDFファイルをドラッグ&ドロップします。

NotebookLMにプロンプトを入力し考察コメントを出してもらう
以下のプロンプトをコピーし、NotebookLMに入力します。
優秀なWebアナリストとして、ソースファイルのデータ(PDFやCSVなど)から考察できることをレポートとしてまとめてください。
## 出力フォーマット
"""
## **【nページ目】**
[nページ目のデータから考察したサマリーコメント(要するに何なのか)を箇条書き300文字程度でまとめる]
### **■ ポジティブ要素**
[nページ目のデータから読み取れる「ポジティブな点」を箇条書き300文字程度でまとめる※このコメント自体は出力しないこと]
### **■ ネガティブ要素**
[nページ目のデータから読み取れる「ネガティブな点」を箇条書き300文字程度でまとめる※このコメント自体は出力しないこと]
## **【総括】**
[レポート全体を総括するコメントを箇条書き300文字程度でまとめる※このコメント自体は出力しないこと]
### **■ ポジティブ要素**
[レポート全体で特筆すべき「ポジティブな点」を箇条書き300文字程度でまとめる※このコメント自体は出力しないこと]
### **■ ネガティブ要素**
[レポート全体で特筆すべき「ネガティブな点」を箇条書き300文字程度でまとめる※このコメント自体は出力しないこと]
"""
## 制約条件
- コメントは「だ・である」調で簡潔に書く
- 絵文字は使わないこと(装飾には【】や■などを用いる)
- 計算が必要な際にはPythonのpandasライブラリを使用する
- 流入チャネルの「Direct」と「Unassigned」は流入元を特定できないため言及しないこと
## サイトの目標
自身のサイト目標や重要な指標を書く
例)
- Webサイトの目的:メルマガ登録(キーイベント指標として「フォーム完了数」を設定)
- KPI:
- フォーム到達数:年間目標2000
- フォーム到達率:目標3%
- フォーム完了数:年間目標500
- フォーム完了率:目標30%
- ユーザーCVR(フォーム完了数/アクティブユーザー数):目標値1%
- 記事評価のためのKPI:
- CTAクリック数
- CTAクリック率(CTAクリック数/表示回数)
- 読了率(記事の最後の見出しが表示された割合)
- 精読率(記事の最後の見出しが表示され、かつ所定の時間が経過した割合)プロンプトは以下の画像のようにNotebookLM中央下部にあるテキストボックスに入力します。

考察コメントが出力される
プロンプトを送信してから数十秒から1分程度待つと、以下のように結果が出力されます。

出力された結果は、最下部にあるコピーボタンを押すことでMarkdown形式でコピーできます。

コピーしたデータを、例えばGoogleドキュメントやメール本文に貼り付けて使用できます。

MarkdownからPowerPointやGoogleスライドに自動変換できるツールを使うと、資料作成の効率化にもなりそうですね。
NotebookLMによって課題となるページが見えてきたら、より詳しい分析もAIに手伝ってもらうことが可能です。個別記事をAIで分析する方法については、以下の記事で解説しています。
SEOの観点からの分析は以下の記事をご覧ください。
UI/UX観点での分析をしたい場合は、以下の記事が役に立つはずです。
さらにGeminiでGoogleスライドに変換する
GeminiにはGoogleスライドを作成する機能が搭載されているため、NotebookLMで作成した考察コメントをもとにプレゼン資料を作成することが可能です。
以下はスライド作成のプロンプト例です。
以下の資料をもとに、プレゼン資料を作成してください。
- 1スライド1メッセージでわかりやすく記載すること
- スライド全体のデザインは最新のトレンドを意識したモダンなものにすること
- スライドの背景色は白系、文字の色は濃いグレーとすること
- ポジティブ要素と中立的な要素は青系、ネガティブ要素は赤系で表現すること
- 装飾に有彩色を使う場合には青系のグラデーションとすること
"""
(資料を記載する)
"""上記プロンプトをGeminiに入力し、「Canvas」機能をオンにした状態で送ります。

上記の例では、以下のように12スライド作成されました。もちろん、スライドの内容は編集可能です。

デザインなどを細かく制御するのは難易度が高いですが、「とりあえず説明用の資料が欲しい」という場合に便利に使えるでしょう。
Googleスライド化する方法についても動画で解説しました。
実はこのスライド作成機能、PDF資料をアップロードすることでも利用できます。ですので、「Looker Studioの資料をそのままアップロードすればいいじゃん」と思い試してみましたが、あまりクオリティの高いものはできませんでした。
あらかじめNotebookLMで「注目すべき箇所」を抽出した上で作成した方が、良い資料が作れるはずです。
何事も「骨組み」が大事だということですね。
AIを使う際に押さえておきたい注意点
NotebookLMは便利なツールですが、AIにデータを読み込ませる以上、情報の取り扱いは慎重に行ってください。特にクライアントのGA4やSearch Consoleのような機密性の高いデータを扱う場合、以下の3つの視点から、リスクと対策を整理しておく必要があります。
契約上のリスクと信頼関係の維持
最も重要で見落とされがちなのが、契約上のリスクです。クライアントとの間でNDA(秘密保持契約)などを結んでいる場合、その契約内容によっては「第三者サービスへのデータ提供」が禁止されているケースもあるはずです。
NotebookLMは、GeminiやChatGPTに比べれば、セキュリティやプライバシーに配慮されたAIだといわれています。GoogleはNotebookLMのヘルプページで「お客様のプライバシーを重視しており、NotebookLM のトレーニングに個人データを使用することは一切ありません」と明言しています。
それでも、AIツールにデータをアップロードすることを嫌がるクライアントはいるでしょう。判断に迷う場合は、事前にクライアントの承諾を得ることが絶対条件です。たとえ契約違反にならなくても、「勝手にAIにアップした」と受け取られてしまえば、信頼関係にヒビが入る可能性もあります。
人為的なヒューマンエラーによる情報漏洩
NotebookLM自体のセキュリティは高い設計になっていますが、実際のリスクは多くの場合、利用者側の設定ミスや運用の甘さにあります。
特に注意が必要なのは共有設定です。NotebookLMは、作成したノートを共有できる機能があり、「リンクを知っている全員に公開」してしまうと、データが誰にでも見られる状態になってしまいます。
デフォルトではアクセスは自分のみに限定されていますが、同僚などに共有する際には権限設定に注意しましょう。
アップロードするデータの中身そのものに潜むリスク
GA4のデータは基本的には匿名化されていますが、自身で設定したカスタムディメンションの中に個人を特定できる情報が含まれてしまうこともあります。また、Search Consoleの検索クエリの中には意図せず機密性の高い内容が紛れ込んでいる場合もあります。
加えて、GA4のアクセスデータは、クライアントのビジネス戦略を反映した極めて重要な情報です。たとえば、「どの記事が最もCVに貢献しているか」「どのチャネルからの流入が最も効率的か」といった情報が外部に漏れた場合、少なくとも良い影響はないでしょう。
データの中身をAIに渡す前に、機密性・個人情報の混入がないかを必ずチェックする。このひと手間が、安全にNotebookLMを使いこなすための前提条件です。
実際に使ってみてわかったこと
私の場合、NotebookLMは基本的に自社サイトのアクセスデータの分析に活用しています。Looker Studioで出力したPDFレポートをNotebookLMに読み込ませ、あらかじめ用意しておいたプロンプトで考察コメントを生成するという流れを、月次業務に組み込むことにしました。
NotebookLMをレポートに活用するようになり、想像以上に大きな変化がありました。
というのも、「自分で分析しているつもり」でも、見たくない現実から目を逸らしているということに気づいたからです。
たとえば、「今月はちょっと数値が下がっているけど、それは一時的なものだろう」とか、「この事象は今は気にしなくてもいいはずだ」といったように、問題点を把握しながらも、心のどこかで考えることを避けてしまう。そんなバイアスが、自分の中にあることに気づいたのです。
NotebookLMを使うようになってからは、その「思い込みのフィルタ」が外れた感覚があります。良くも悪くも、AIは淡々とデータを読み取り、フラットな視点で指摘をしてきます。そのコメントを見た瞬間、「ああ、やっぱりそこが原因だよね」と、現実を直視せざるを得なくなるというわけです。
自分で分析を始める前に、一度別のアナリストに入ってもらって初期分析をやってもらう。そんな感覚です。そのおかげで、本質的な課題に目を向けられるようになり、「ちゃんとやらなきゃ」というモチベーションを持つことができるようになりました。
まとめ:AIに任せるところ、任せないところ
データ分析の現場では、「見る」「考える」「伝える」という複数の工程があります。そしてそのすべてを一人で担おうとすると、知らず知らずのうちに思考が曇り、判断も鈍ってしまいます。
NotebookLMのような生成AIは、その中でも「見る」「考える」「伝える」の各工程を、「課題を拾い上げ、整理する」という形で補助してくれます。しかもバイアスなく、フラットな視点で指摘してくれるため、思い込みに左右されやすい私たちの思考に「外部の視点」を与えてくれます。
ただし、その解釈をどう捉えるか、どんな意図を読み取り、何を伝えるかは、やはり人の仕事です。AIが出したコメントに対して「それは違う」と思えるかどうか、あるいは「確かに、そう見ることもできる」と自分の考えをアップデートできるかどうか。それは、見る人自身のスキルや経験が活かされる部分です。
別の記事でも書いている通り、「データを成形する」という場面でのAI活用にも「電動ノコギリ」的な考えが必要です。
データ分析におけるNotebookLMは、「自分より少し視野の広い後輩(東大卒)」くらいに捉えておくのがちょうどいいと考えています。任せるところは任せて、自分はそれを好きに解釈して利用する。それこそが、AI時代のレポート業務における「新しい価値の出し方」だと思います。
NotebookLMは、アップロードしたソースデータに基づいた正確な処理が魅力的なAIです。私はレポート業務以外にも、サイト設計や作成した記事の確認業務に愛用しています。以下の記事もあわせてご覧ください。
この記事で紹介した方法を含めたAI活用のノウハウは、以下のUdemyコースで体系化して解説しています。AIを活用してWebマーケティング業務を高度化&効率化したい方は受講をご検討ください。
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