SEOの本質は「Googleと一緒に検索結果を作る」ということ
- 「SEOで上位表示するための最新のテクニック」
- 「生成AIを使っても上位表示できる!」
- 「いや、AI記事ではダメだ」
そんな、SEOに関する発信を見るたびに、私はどこか違和感を覚えます。
たしかに、検索で上位に表示されることは大切です。アクセスが増えれば、成果につながる可能性も高くなりますし、そのために様々なテクニックを取り入れたい気持ちもわかります。
でも、そもそもSEOとは「検索結果で目立つこと」ではありません。SEOの本質は、「検索エンジンにとって最適な状態にサイトを整えること」にあります。つまり、上位表示は「目的」ではなく「結果」なのです。
実際に、私がこれまで書いてきた記事は、どれもSEOを意識していません。いや「意識していない」は言い過ぎかもしれませんが、少なくとも出発点はSEOではないのです。それでも検索上位に表示され、コンバージョンも発生しています。
たとえば以下の記事は、「GA4のセッションの合計が合わないんです」というクライアントからの相談をベースに書いています。
ポイントは、「お客さんの悩みをいかに解決するか」を出発点としたこと。
この考え方は、Googleが掲げる10の事実の中でも「ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる」と強調されています。この言葉が示すのは、「検索意図に対して誠実に応えることができれば、結果として評価されるしサイト運営者の成果にもつながる」という思想です。
そのGoogleの思想に賛同し、「Googleと一緒に理想の検索体験を作る」ということ。
この視点を持っているかどうかで、コンテンツ制作の方向性が大きく変わります。まずは、「本質的なSEOとは何か」をいま一度、整理してみましょう。
大前提:SEOとは「最適化」であって「上位表示の技術」ではない
多くの人が、SEOという言葉を聞いた瞬間に「検索結果で上位を取るためのテクニック」と連想します。しかし、そもそもSEOとは「Search Engine Optimization」の略語であり、直訳すれば「検索エンジンの最適化」です。「上位化」ではないのです。検索エンジンが最も適した形になった結果、上位表示されている(またはされていない)にすぎません。
「ユーザーの検索意図の答えに最も近いページ」が、結果として検索上位に表示されているということです。
このSEOに対する誤解を持ったままだと、作るコンテンツの方向性もズレていきます。キーワードの詰め込みや、不自然な見出し構成など、「ユーザーではなくGoogleに向けた文章」になってしまうのです。結果として、ユーザーには刺さらず、検索順位も思うように上がらない(Googleに嫌われる)という悪循環に陥ってしまいます。

だからこそ、最初に立ち返るべきなのは「検索意図とは何か?」、さらに「その意図に対してどんな答えが最適なのか」という問いです。細かいテクニックは、その土台の上にしか成立しないのです。
では、この思想を、どのように実際の記事に落とし込んでいくのか。次のセクションで具体的に見ていきましょう。
「検索キーワードから始める」の本質
ここでは、私が行っている記事制作の方法について解説します。
SEO的な記事を書くというと、「まずは検索ボリュームを調べて、上位サイトを分析して、キーワードを決めて……」というステップを思い浮かべる方も多いかもしれません。たしかに、それも一つの手法です。でも、私が書いた多くの記事は、まったく違うアプローチから生み出されています。
キーワードはユーザーからの「問いかけ」
冒頭でも挙げた以下の記事は、クライアントからもらった「GA4のセッションの合計が、どうしても合わないんです」という相談を起点として、「そもそもセッションって何だろう」と説明する記事に仕上げています。
検索ボリュームは一切調べていません。ターゲットキーワードも、後からつけたようなものです。意識したのは、「同じ疑問を持つ人に、きちんと腑に落ちる説明ができるかどうか」だけでした。
結果として、その記事は「GA4 セッション 合わない」などのキーワードで上位を獲得(2025年4月時点)し、実際にコンバージョンにもつながっています。
「検索意図を捉える」ことは、必ずしもSEOツールから始める必要はありません。むしろ、リアルな相談や現場での疑問の方が、はるかに精度の高い「意図」の源泉になるのです。
「SEOで上位表示するには、一次情報を取り入れて書くべき」という意見も耳にしたことがある方は多いでしょう。上記の書き方で出来上がるのが、まさに「一次情報を取り入れた記事」なのです。
記事の出発点は、「どんな言葉で検索されるか」ではなく、「誰が、どんな背景で困っているのか」。その人の「問い」こそが、「検索キーワード」なわけです。「問い(キーワード)」に正面から応えようとすること。それこそが、結果として強固なSEOとなります。
キーワードから記事を設計する方法
では実際に、この「セッションの合計が合わない」という記事を、どのような構成で設計したのかを少し紹介します。
まず、冒頭では「合わない」という違和感を共有することから始めました。これは、同じ悩みを持っている読者に「これは自分のことだ」と思ってもらうためです。そのうえで、「そもそもセッションとは何か?」という定義に一度立ち返り、誤解の原因になっている構造を説明しました。
さらに、なぜ合計値がズレて見えるのかを、図を使って可視化。GA4の仕様は文章だけだと伝わりづらいことが多いため、イメージを通して「なるほど、そういうことか」と理解してもらうことを意識しています。
文章全体の構成としては以下のようになっています。
- 1. 現象の提示:読者がつまずくリアルな瞬間
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冒頭では、具体的な「現象」を描写します。共感や問題意識を引き出す起点となる部分です。
- 2. 違和感の言語化:「なぜ?」と感じるポイントを明確にする
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その現象に対して感じるモヤモヤや違和感を、読者の代わりに言語化(できれば図解も)します。記事を読み進める動機が生まれる場面です。
- 3. 用語や構造の定義:前提を揃える
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問題の本質に迫るために、必要な用語や仕組み、背景情報を整理します。読者と筆者の理解をそろえるステップです。
- 4. 可視化・構造化:理解を助ける視覚的な工夫
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図や例を使って、複雑な仕組みや構造を視覚的に説明します。言葉では伝わりにくい要素を補完します。
- 5. 原因の解明:問題の根本に迫る
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表面的な事象ではなく、「なぜそうなるのか?」という因果関係を掘り下げていきます。納得感を生む核の部分です。
- 6. 再発防止の視点:どう見れば混乱しないか
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今後同じ問題に直面したときにどう考えればよいか、読者が自走できるような「見方」や「考え方」を提示します。
- 7. まとめ:本質と行動指針の整理
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記事全体を振り返りながら、読者に伝えたかった核心と、次にとるべき行動をコンパクトにまとめます。
もちろん、テーマによってどのような構成にすべきかは変わります。ですが、必ず意識したいのは、読者が「この記事を読んだことで、納得して情報検索を終えられるか」という一点です。
「検索意図に応える」というのは、「知識を詰め込むこと」ではなく、「その人が今つまずいているポイントに、どれだけ丁寧に付き合えるか」という姿勢なのです。
ただし、実装を軽視していいわけではない
ここまで、「SEOの本質は検索意図に応えることである」と繰り返しお伝えしてきました。しかし、だからといって、被リンクや内部リンクの設計、ページの表示スピードといった実装面の要素を軽視していいわけではありません。
どれだけ有益なコンテンツを書いたとしても、サイトの表示が極端に遅ければユーザーは離脱します。検索エンジンもそれをネガティブなシグナルとして捉える可能性が高いでしょう。
また、単体の記事が素晴らしくても、関連する記事との内部リンクが適切に張られていなければ、「記事群(トピッククラスター)」としての強さを手に入れることができません。
被リンクも同様です。質の高い外部リンクは、そのコンテンツの信頼性や話題性を示す重要な指標になります。さらに、検索エンジンは「その情報がどのドメインに属しているか(誰が発信しているのか)」も評価に含めています。長年良質なコンテンツを発信し続けてきたドメインには、それなりの評価バイアスがかかるでしょう。
実装面でもうひとつ忘れてはいけないのが、Studioに代表されるようなSPA(シングルページアプリケーション)による構成です。見た目はリッチでも、クローラーがコンテンツをうまく読み取れず、ページのインデックスにネガティブな影響を与えてしまうケースもあります。以下の記事でも詳しく解説していますが、技術的に凝った作りによって検索されづらくなってしまうのでは本末転倒です。
検索意図に応える設計思想が「核」である一方で、それを技術的な土台や構造もまた欠かせないのです。
SEOは「思想」と「実装」の両輪で成り立っている。どちらか一方に偏ると、検索結果での評価は伸び悩んでしまう。この現実にも、しっかり向き合うべきだと私は思います。
まとめ
SEOとは、「検索結果で目立つためのテクニック」ではなく、「検索意図に対して最も適切な答えを提供する」ための設計思想です。上位表示は、その構造と誠実さの「結果」として得られるものにすぎません。
Googleは、常にユーザーの利便性を最優先に考えて検索アルゴリズムを進化させてきました。そうしたGoogleの試行錯誤の結果として、現在の検索結果があります。ユーザーの課題を深く理解し、適切に応えるコンテンツこそが、最終的に評価されるということです。
とはいえ、コンテンツの中身さえよければ検索で評価される、というほど単純な話でもありません。表示速度や内部リンク構造、被リンク、ドメインの信頼性といった実装の部分も、やはり評価に影響します。つまり、検索意図に応える「思想」と、それを支える「実装」の両輪があってはじめて、検索結果にふさわしいページとして認識されるのです。
「AIで生成したコンテンツはペナルティを受ける?」「動画を設置するとSEOに効く?」という表面的なテクニックを追い求めているうちは、SEOで成果を上げることはできないでしょう。テクニックよりもまず、「このページは誰のためにあるのか」「その人は何に困っていて、どうすれば解決できるのか」「この記事は検索結果の上位にあるべき記事か?」を問い直してみてください。
ちなみに、「生成AIを使って書いた記事がSEOにどう影響するのか」という点については、以下の記事で実例をもとに解説しています。
SEOとは、検索エンジンと戦うものではありません。「Googleと一緒に検索結果を作っている」という意識でコンテンツを作ること。それが、昔も今も変わらないSEOの本質だと思っています。 そして、「このページは、検索結果の上位にあるべきかどうか」を、自分でジャッジできるようになることこそが、本当のSEO力ではないでしょうか。
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