ダークソーシャル(ビジネスチャット上の口コミ)にSEO効果はあるか
TeamsやBacklog、Redmineなどのチャットツールやプロジェクト管理ツールに貼られたリンクからのアクセスに、SEO効果があるのだろうか。そう気になることはないでしょうか?
- 「このサイトの手順が一番わかりやすいから、これを見て設定しておいて」
- 「この記事、参考になるからチーム全員で目を通しておこう」
そんな会話とともに、あなたの記事URLが非公開のツール上で共有されるというシチュエーションは、チームで仕事をしている方ならイメージしやすいはずです。こうしたビジネスチャットのような「見えない場所での共有」から生まれる流入を、マーケティング用語で「ダークソーシャル」と呼びます。
このトラフィックのほとんどはDirect(参照元なし)として計測されますが、一部の「足跡(リファラ)」が残っているアクセスについては、以下のようにGA4のレポートで捕捉することができます。

一見すると「被リンクを受けている」と喜んでしまいそうですが、これらのリンクをGoogleのクローラーは辿ることができず、直接的なSEO効果はありません。
しかし、残念がるのは早計です。
Googleが検索順位を決めるための情報は、クローラーが集めてきたものだけにとどまりません。近年はブラウザのChromeを通じた「実際のユーザー行動」を計測していることが明らかになっています。
つまり、たとえクローラーが訪れることができないクローズドな環境からのアクセスであったとしても、ページ内でのユーザー行動が良ければSEO的にプラスに働く可能性があるということです。
この記事では、チャットツールやプロジェクト管理ツールなどから発生するトラフィックが、いかにしてページ評価を上げるのかを解説します。
チャットツールからの被リンクをクローラーが辿れない仕組み
まず、SEOの技術的な側面から、クローズドなチャットツールからのリンクをGoogleのクローラーが辿れない仕組みを理解しておきましょう。
例えば、あなたが書いた渾身の技術ブログが、ある大企業の社内Wiki(BacklogやRedmineなど)に「参考資料」としてリンクされたとします。これは人間から見れば「プロフェッショナルからのお墨付きをもらった」という信頼の証明になりますが、検索エンジンのロボット(Googlebot)にとっては「存在しない」のと同じです。
それらのツールがログイン認証の中に守られているからです。Googlebotは他社の社内システムにログインできないため、そこにリンクがあることを発見できず、当然ながら「被リンク(バックリンク)」としてカウントもしません。
つまり、Googleのいう「PageRank(いわゆるリンクジュース)」の受け渡しは、物理的に遮断されているのです 。
PageRankは、Google検索の基礎を築いた画期的なアルゴリズムです。Webページ間のリンクを学術論文の引用(投票)とみなして重要度を測定します。
非公開なチャットツールからのリンクだとしても、リファラ情報が残っていればGoogleアナリティクスのトラフィックレポートにはstatics.teams.cdn.office.net(Teams)や l.facebook.com(Facebook)などという形でドメインが表示されます。これらは他の流入元と並列で表示されますので、被リンクのように見えますが、前述した理由でSEO的な「投票権」は持っていません。
つまり、ビジネスチャットからのリンクは、技術的には「SEO効果ゼロ」です。
しかし、ここで話を終わらせてはいけません。ロボットには見えなくても、Googleには別の「目」があるからです。
クローラーが見ていなくても「Chrome」は見ている
非公開のチャットツールからのリンクが「被リンク」としての効果がないとしても、他社のプロフェッショナルたちがあなたの記事を「価値のある情報だ」と評価している事実は変わりません。
この「クローラーが辿れない価値」を評価する仕組みも存在します。それが「Chrome User Experience Report(CrUX)」という仕組みです。
Googleは、Chromeブラウザを使用している実ユーザー(匿名データの送信を許可しているユーザー)のブラウジング体験を収集しています。このデータ収集において、「ユーザーがどこから来たか(リンク元が社内か社外か)」は関係ありません。
たとえGooglebotが入れないプロジェクト管理ツール経由であっても、そこで働く社員が生身の人間としてページを開き、熟読しているという事実は、「実測値」としてGoogleに記録されるということです。
Google検索アルゴリズムの内部文書に関する分析によれば、Googleは公式には否定していたものの、実際にはChromeブラウザからのクリックストリームデータ(ユーザーの行動履歴)を利用してユーザーの行動を理解し、検索ランキングに影響を与えている可能性が高いとされています。
参考:The Google Search Algorithm Leak: What It Means and Decoding It For You
例えば、ある企業のエンジニアたちが、あなたの記事を業務マニュアルとして使い、毎日のようにアクセスし長時間滞在して問題を解決している。この「濃い利用実績」は、Googleに対して「実用的で高品質なページである」ということを示す強力なシグナルとなります。
検索順位を直接操作するわけではありませんが、サイト全体の「ページエクスペリエンス評価」を底上げし、ドメインの信頼性(Authority)を実体のあるものとして強化していくのです。
これこそが、まさにGoogleが提唱する「ヘルプフルコンテンツ」といえます。
「ヘルプフルコンテンツ」とは、Googleが提唱する「検索エンジンのためではなく、人間が人間のために作成した、独自性の高い有用なコンテンツ」のことです。
当初は2022年に特定のアップデートとして導入されましたが、2024年3月からはGoogleのコアランキングシステムに完全に統合されました。単に検索順位を上げるためだけに量産された質の低い記事を排除し、ユーザーの悩みや疑問を真に解決してくれる「役に立つ情報」を正当に評価するための仕組みです。現在のSEOにおいて、小手先の技術以上に「コンテンツの実用性と信頼性」が問われるようになった象徴的な変化と言えます。
チャットツールからのアクセスをモニタリングする方法
ここまで説明してきた「信頼の蓄積」を想像で終わらせないために、GA4のチャネルグループを活用して「見えない評価」を観測してみましょう。
すべてのアクセスが見えるわけではありませんが、一部のリファラ情報が残っているアクセスをGA4でグルーピングすることで、その兆候を掴むことができます。
GA4管理画面から「データの表示 > チャネルグループ」と進み、「新しいチャネルグループの作成」ボタンを押します。

チャネルグループ作成画面が表示されたら、グループ名を入力し「新しいチャネルの追加」ボタンをクリックします。

チャンネル名(今回はBusiness Chatに設定)を入力し、チャネルに含める条件設定を行います。

チャネルの条件は以下のように設定します。
| ディメンション | マッチタイプ | パターン |
|---|---|---|
| 参照元 | 正規表現に一致 | 下記正規表現パターンを入力 |
正規表現のパターン
statics\.teams\.cdn\.office\.net|teams\.microsoft\.com|talk\.worksmobile\.com|board\.worksmobile\.com|mail\.worksmobile\.com|app\.aipo\.com|redmine\.|s02\.company\.talknote\.com|s01\.company\.talknote\.com|app\.asana\.com|l\.messenger\.com|trello\.com|atlassian\.net|jira\.|notion\.so|garoon\.|cyboze\.|sharepoint\.com|planner\.cloud\.microsoft|docs\.google\.com|calendar\.google\.com|keep\.google\.com|sites\.google\.com|enjin\.lightning\.force.com|smartdb\.jp|welog\.jp|app\.jooto\.com|maildealer\.jp|tocaro\.im|connect\.zoho\.com|asp06\.wawa\.ne\.jp|okta\.com|github\.com正規表現とは、特定のパターンにマッチする文字列を抽出するための技術です。今回のように、1つのフィルタで複数の要素を抽出する時に使います。
詳しい使い方については、以下の記事で解説しています。
登録したチャネルの優先度をReferralよりも高く設定します。「並べ替え」ボタンを押してドラッグすることで並び替えることができます。

この設定を行うことで、これまで「Referral」の中に埋もれていた社内ツールやグループウェアからの流入が一本化され、以下のようにレポート上で明確に可視化されるようになります。

たとえ数が少なくとも、ここからの流入が継続的にあるということは、その背後に「計測できないダークソーシャル経由のプロフェッショナルな読者」が数多く存在することを示唆しています。
「隠れ人気記事」を大切に磨こう
こうしてダークソーシャル経由の数値が見えるようになると、検索ボリュームはほとんどないのに、なぜかチャットツール経由で定期的に読まれている「隠れ人気記事」が見つかるはずです。
私の場合も、以下のように散布図にしたところ、ダークソーシャル経由のアクセス比率が明らかに高い記事が2つ見つかりました。

こうした隠れ人気記事を見つけたら、以下の対策を実施してみてください。
情報の鮮度を最優先で守る(メンテナンス)
「隠れ人気記事」は、どこかの現場でマニュアルとして使われている可能性が高いです。もし情報が古くなっていたり、コードが動かなくなっていたりすれば、あなたのサイトの信頼は損なわれます。検索流入が少なくても、この記事のリライト優先度は「最上位」です。常に最新の情報を保ち、信頼をつなぎ止めましょう。
同じ切り口で記事を増やす(横展開)
「隠れ人気記事」には、検索キーワードツールでは見つからない「現場のリアルな需要」があります。「特定のエラー解決」や「マイナーなツールの設定」などが読まれているなら、それは強力なヒントです。同じ切り口で別のツールの記事を書くなど横展開することで、プロフェッショナルな方達からの支持を盤石なものにできます。
まとめ:「見えない信頼」にも投資しよう
「検索ボリュームが少ないから、書く意味がない」「被リンクがつかないから、SEO効果がない」
もし、あなたのチームでそんな議論が起きたら、この記事のことを思い出してください。
確かに、他社のTeamsやRedmineに貼られたリンクは、Googleのロボットには見えません。従来のSEO指標であるPageRankも増えません。しかし、社内チャットからアクセスというのは「生身の人間」の行動です。これは、むしろロボットからのアクセスよりも重要だといえます。Googleもそれがわかっているからこそ、こっそりとChromeのユーザー行動データを集めているわけですね。
彼らが日々の業務であなたの記事を開き、課題を解決している。その「実利用のデータ」は、Chromeブラウザを通じてGoogleに届き、あなたのサイトが単なる情報の羅列ではなく、実社会で役に立っている「ヘルプフルコンテンツ」であることを証明し続けています 。
見つけた「隠れ資産」を磨き込み、現場で本当に役立つ情報を発信し続けること。それが結果として、人間からもGoogleからも信頼される「強いドメイン」を育てることにつながるのです。



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