5年後に泣かないためのWeb制作|Studio導入前に知っておくべき「データの所有権」

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「デザインがきれい」「ノーコードで簡単」「サーバー管理も不要」

Web制作の現場において、ノーコードツール「Studio」の勢いが止まりません。 私自身、Studioでサイト構築をしてみて、その操作性の高さや手軽さに感動した1人です。

確かにStudioは素晴らしいツールです。直感的な操作で、驚くほど美しいWebサイトが短期間で完成します。「とにかく早く、安く、綺麗に立ち上げたい」というニーズにおいて、これほど強力な選択肢はないでしょう。

かつてはSPA(シングルページアプリケーション)を採用していたために「SEOに弱い」とされていましたが、最新のアップデートでMPA(マルチページアプリケーション=従来型のWebサイト)に変更され、その弱点も解消されつつあります。

しかし、もしあなたが「Webサイトを、将来にわたって自社のビジネスを支える『資産』にしたい」と考えているなら、Studioの採用には一度立ち止まって考える必要があります。

誤解を恐れずに言えば、StudioのようなSaaS型(クラウド型)ツールでサイトを作ることは、「家具付きの高級賃貸マンション」に住むようなものだからです。

入居してすぐに快適な生活が始められますし、内装も洗練されています。 ですが、あくまでそこは「他人(プラットフォーム)」の土地と建物です。

  • 家賃(利用料)が突然上がっても、拒否できません。
  • 壁を壊してリノベーション(高度な機能拡張)をしたくても、許可が降りません。
  • そして最大のリスクは、退去(解約)する時、家具(データ)を置いて出て行かなければならないことです。

ビジネスが成長し、サイトを大きく育てようとした時、この「所有権のなさ」が致命的な制約になることがあります。

この記事では、機能の○×比較ではなく、もっと根本的な「ビジネス資産としてのWebサイト」という視点から、SaaS型ツールのリスクと、あえてWordPressを選ぶべき理由について解説します。

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便利さの裏にある「ロックイン(囲い込み)」の恐怖

Studioは、サーバー契約も、CMSのインストールも、セキュリティ設定も必要ありません。アカウントを作ればすぐにサイト制作を始められます。 この「手軽さ」は、ビジネスの立ち上げ期には最強の武器です。

しかし、その便利さと引き換えに、私たちは「データの主導権」という非常に重要なものをプラットフォーム側に渡してしまっています。 これを「ベンダーロックイン」と呼びます。

「積み上げた資産」を持って出て行けない

もしあなたが賃貸マンションを解約する場合、家具や荷物はトラックに積んで次の家でも使えます。 しかし、Studio(SaaS型ツール)の場合、「引っ越し」は極めて困難です。

Studioには、作成したWebサイトのデザインデータや、構築したページのソースコードをまるごとエクスポートして、他のサーバー(WordPressなど)に移す機能はありません。

Studioでは、CMSダッシュボードで管理するCMSのデータなどをエクスポートする機能は提供していません。Studio上のページ情報、デザインやソースコードのエクスポートもできません。

Studio.Help

これが意味することは深刻です。 例えば、Studioでオウンドメディアを運用し、3年間で200記事を書いたとしましょう。そのタイミングで「もっと高度な運用をしたいからWordPressに移りたい」と思っても、データを自動で移す手段がないのです。

  • テキストと画像→手作業で1ページずつコピー&ペーストするしかありません。
  • デザイン→再現不可。新しい環境でゼロから作り直しです。
  • SEO評価→URL構造が変わる可能性が高く、積み上げたドメインの評価がリセットされるリスクがあります。

私自身、独自CMSで作られた数百ページのサイトをWordPressへ移行する案件に関わったことがありますが、その作業は「手作業によるコピー&ペースト」の連続でした。膨大なコストと時間がかかり、SEOの評価もリセットされかねない、まさに悪夢のような作業です。

記事が増えれば増えるほど、サイトが育てば育つほど、「他へ移るコスト」が膨大になり、事実上そのプラットフォームから抜け出せなくなります。 これがロックインの怖さです。

「家賃(利用料)」の決定権は相手にある

プラットフォームに依存している以上、料金プランの改定や規約変更には逆らえません。

Studioは営利企業が提供するサービスです。サービスの維持・向上のために料金が上がることは、ビジネスとして健全であり、当然あり得ることです(実際に過去にも改定は行われています)。

もし将来的に、月額費用が倍になったり、必要な機能が上位プラン限定になったりしても、「嫌なら出ていく(=サイトを捨てる)」か「受け入れて払い続ける」かの二択しかありません。 ロックインされている状態では、価格交渉の余地すら残されていないのです。


「とりあえず今はStudioで」と始めるのは構いません。しかし、「将来サイトが大きくなった時、どうやってWordPressなどの自社管理環境へ着地させるか?」という問いに答えられないまま運用を続けるのは、時限爆弾を抱えているのと同じです。

Webサイトを「使い捨てのチラシ」ではなく「資産」と捉えるなら、「いつでも自分の手元にデータを戻せる状態(ポータビリティ)」を確保しておくことは、最低限のリスク管理と言えるのではないでしょうか。

結論:Webサイトを「資産」にするならWordPress一択

ここまで、SaaS型ツールが抱える「データのロックイン(所有権の欠如)」というリスクについて解説してきました。

「じゃあ、結局どうすればいいの?」 その答えはシンプルです。

ビジネスの資産としてWebサイトを作るなら、やはりWordPressが最も手堅い選択肢です。

「WordPressは管理が大変そう」「古い」というイメージがあるかもしれません。しかし、ビジネスの継続性やリスク管理の観点から見れば、これほど理にかなったシステムは他にありません。 理由は以下の3点です。

1. 土地も建物も、すべてが「自社資産」になる

WordPressでサイトを作るということは、自分で契約したサーバー(土地)の上に、自分で管理できるシステム(家)を建てることを意味します。

そこにある記事データ、顧客リスト、デザイン、ドメインの評価など、すべてがあなたの会社のものです。 誰かに「出て行け」と言われることもなければ、突然の規約変更でデータが消される心配もありません。

もし利用しているサーバー会社が気に入らなければ、データを持って別のサーバーに引っ越すことも自由自在です。この「ポータビリティ(持ち運び可能性)」があるからこそ、Webサイトは初めて「資産」と呼べるものになるのです。

2. 「世界標準」だから、トラブルの答えが必ず見つかる

WordPressは、2025年時点で世界のWebサイトの約4割で使われているオープンソースシステムです。 この「圧倒的なシェア」こそが、運用上の大きな保険になります。

参考(WordPressのシェアについて):W3Techs

マイナーな独自CMSやSaaSツールの場合、トラブルが起きた時にネットで検索しても情報が出てこず、サポートからの返信を何日も待たなければならないことがあります。 一方、WordPressなら「ググれば答えが見つかる」確率が段違いに高いのです。

  • エラーの対処法
  • セキュリティ設定の方法
  • 便利なカスタマイズ方法

これらが日本語で、無数に解説されています。また、ChatGPTやGeminiなどのAIに質問しても、学習データが豊富なWordPressに関する質問には非常に正確に答えてくれます。 「困った時に、自分たちで解決できる」。これは、ビジネスを止めないために非常に重要なポイントです。

3. ノーコードに近い感覚で運用できる

「WordPress=コードを書かないといけない」というのは、もはや過去の認識です。 現在のWordPressは「ブロックエディタ」という直感的な投稿画面が標準になっており、文章や画像を積み木のように配置してページを作れます。

さらに、日本国内で人気の有料テーマ(例えば私が愛用している「SWELL」など)を使えば、HTMLやCSSの知識が全くなくても、プロ顔負けのデザインサイトを構築可能です。

「所有権(資産性)」と「使いやすさ」の両立。 これが、今なお多くの企業がWordPressを選び続ける理由なのです。


ちなみに、WordPressを選んだとしても、そこで「数百万円かけてオリジナルのテーマを作る」必要はありません。

Webサイトの本来の目的は「ビジネスの成果」を上げることです。デザインの独自性にこだわりすぎて、予算と時間を浪費してしまうのは本末転倒。WordPressで成果を出すための「最も合理的で賢い選択肢」について、以下の記事で解説しました。「Studioか、フルスクラッチか」で迷っている方は、第三の選択肢としてぜひご一読ください。

それでも「Studio」が輝く、2つの利用シーン

ここまで「資産にするならWordPress」と述べてきましたが、決してStudioというツール自体を否定しているわけではありません。 目的が「長期的な資産構築」以外にある場合、Studioはその真価を発揮します。

具体的には、以下の2つのシーンでは、WordPressよりもStudioの方が適していると言えるでしょう。

1. 「短期決戦」のキャンペーンサイトやLP

数ヶ月で終了するイベントの特設サイトや、広告用のランディングページ(LP)などは、Studioの独壇場です。

これらのプロジェクトに共通するのは、「サイトを10年も20年も残すつもりがない(=資産化しなくていい)」という点です。 将来的なデータ移行や、長期的なロックインのリスクを考える必要がないため、Studioのデメリットである「出口のなさ」が問題になりません。

「サーバーを契約して、WordPressをインストールして…」という手間をかけるよりも、Studioでサクッと作って公開し、役目を終えたら解約する。 チラシのように「消耗品」として割り切って使う分には、Studioのスピード感とデザイン性は最強の武器になります。

2. 「名刺代わり」のポートフォリオやティザーサイト

「とりあえずURLがあればいい」「世界観だけ伝わればいい」という、新製品のティザーサイトや個人のポートフォリオサイトも、Studio向きです。

こうしたサイトで重視されるのは、複雑な機能やSEOによる集客よりも、「訪問した瞬間の没入感」や「圧倒的なデザイン体験」です。 Studioの自由度の高いデザインエディタを使えば、コードを書かずに思い通りのビジュアル表現が可能です。

「まずは小さく、美しく始めたい」というフェーズにおいて、保守管理の手間がいらないSaaS型ツールは強力な味方になります。


重要なのは、「適材適所」です。

  • 家を建てる(本店の公式サイトを作る)なら、持ち家の「WordPress」
  • イベント会場を借りる(短期サイトを作る)なら、レンタルの「Studio」

この使い分けさえ間違えなければ、どちらも素晴らしい成果を生み出してくれるはずです。

よくある質問(FAQ)

ここでは、Studio導入を検討する場合に考えるべき点についてFAQ形式で回答します。

Studioで作ったサイトを、将来WordPressに移行することはできますか?

非常に困難です。 Studioには、デザインや記事データを他社CMS用に書き出す(エクスポートする)機能がありません。移行する場合は、テキストと画像をコピー&ペーストして、新しい環境でゼロから作り直すことになります。

記事数が少なければ手作業で対応できますが、数百ページ規模のメディアになると、膨大なコストと手間がかかるため現実的ではありません。

「StudioはSEOに弱い」というのは本当ですか?

インデックス(表示)に関しては改善されていますが、「攻めの対策」は苦手です。以前は構造上の問題でインデックスされづらいと言われていましたが、現在は改善されています。

しかし、記事ごとに詳細な構造化データを設定したり、読み込み速度を細かくチューニングしたりといった、競合に勝つためのより高度なSEO対策(LLMO含む)を行う機能は制限されています。

WordPressはセキュリティが弱いと聞きますが大丈夫ですか?

適切な設定を行えば問題ありません。 WordPressが攻撃されやすいと言われるのは、利用者が多く、古いバージョンのまま放置されているサイトが多いためです。

現在は、セキュリティ対策用のプラグインを入れたり、サーバー側のWAF(ファイアウォール)設定を有効にしたりすることで、企業サイトとして十分な強度を保つことができます。

どのような場合にStudioを選ぶべきですか?

「短期的な利用」や「デザイン最優先」の場合です。 数ヶ月で終了するキャンペーンサイト、広告用のランディングページ(LP)、個人のポートフォリオなど、将来的なデータ移行や資産化を考慮しなくて良いプロジェクトには最適です。

逆に、長期的に運用してコンテンツを積み上げていくオウンドメディアや企業サイトには、WordPressをおすすめします。

まとめ:見た目ではなく「資産になるか」で選ぶ

Studioは、デザインが美しく、誰でも直感的にWebサイトを作れる革新的なツールです。その手軽さは、Web制作の民主化を大きく進めたと言って間違いありません。

しかし、ビジネスにおいて「手軽であること」は、常にメリットとは限りません。 「入り口が広い(始めやすい)」ということは、往々にして「出口が狭い(辞めにくい)」ことを意味します。

  • Studio→初期コストを抑え、スピード感を持って立ち上げるには最高のツールです。しかし、そこはあくまで「プラットフォームの土地」であり、積み上げたデータを持って自由に出ていくことはできません。
  • WordPress→サーバー契約や保守の手間はかかります。しかし、苦労して建てたその家は、土地ごとあなたのものになり、将来にわたってビジネスを支える揺るぎない「資産」になります。

これからWebサイトを作ろうとしている方は、どうか「デザインがきれいだから」「流行っているから」という理由だけでツールを選ばないでください。

「このWebサイトは、5年後、10年後も自社の資産として残したいものか?」

その問いに対する答えが「YES」ならば、多少の手間はかかっても、データの主導権を自分で持てるWordPressを選ぶべきです。 逆に、短期的なプロモーションであれば、迷わずStudioを選んでください。

ツールに優劣はありません。あるのは「目的に合っているかどうか」だけです。 あなたのビジネスにとって、Webサイトが「消費されるもの」なのか「積み上げるもの」なのか。その定義を明確にすることこそが、Web制作の第一歩です。

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屋嘉比 馨
ボーダーヘイズ・ジャパン代表
ウェブ解析士協会所属・ウェブ解析士。
ラジオ局、広告代理店などに勤務ののち、大手SIerのWebマーケティング担当に。主にオウンドメディア、広告運用にて営業リード・採用応募獲得に貢献。
2022年に独立し、ボーダーヘイズ・ジャパンを設立。
これまで100サイト以上の改善・計測環境構築に貢献した経験をもとにUdemy講師としても活動中。受講生4,600人以上、Udemy Business認定コースも含めベストセラーコース5本を抱える。

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